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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第11章 第二話 【はまなすの咲く町から】 真実

 迂闊に動いて二人に気づかれては困るので、キョンシルはしばらく同じ場所にいた。また、すぐに次の行動に移る気分にもなれず、魂が抜けたようにボウとその場に佇んでいたのだ。ふと我に返った時、既に本堂の前に二人の姿はなかった。
 キョンシルはそのまますべるように歩き、本堂の脇扉を開いた。つい先刻まで、トスと謎の美女が立っていた場所である。
 静々と歩いて中央の大きな観音像の前に佇む。丁度真正面の障子張りの扉から、月光が差し込んでいる。月の光が扉に填った桟の影を本堂の床に縞模様として描き出していた。

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