テキストサイズ

側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第6章 崔家での日々

「心配してくれて、ありがとう。ジュボクが思っているように、多分、私の一方的な片想いだと思うわ。でも、良いの。恋って、その人が自分を幸せにしてくれるから、だから好きになるわけじゃないでしょう。打算で恋ができるのなら、私、あの人のことを最初から好きになんてならなかったと思うの」
 ジュボクが鼻を鳴らした。
「キョンシル、お前って、相変わらずの泣き虫だと思ってたけど、結構大人になったんだな」
「なによ、それ。失礼しちゃうわ」
 キョンシルが頬をふくらませ、ジュボクが声を上げて笑う。キョンシルは我ながら、そのとおりだと思った。打算で恋をするのなら、どうして、ここまで見込みのない恋を始めただろう? ジュボクのように木訥で誠実な男を選んだ方がよほど容易く幸せを手に入れられると判りきっているのに。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ