
側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】
第3章 旅立ち
その時、キョンシルは気づいていなかったけれど、トスの使った〝俺たち〟は紛れもなくキョンシルとトス自身を指していた。トスの心の中でも、明らかに何かが動き始めている。トス本人もまだ自覚していない意識の深い底で新しい感情が目覚め始めているのだ。
キョンシルはそれでもまだ少し躊躇った後、トスの毅然とした貌を見て話を元に戻した。
「お母さんが息を引き取る間際のことよ。この首飾りを渡して、こんなことを言ったの」
キョンシルはミヨンの遺言とも言うべき言葉をそのままトスに伝えた。
トスは眼を見開いたまま話に聞き入っていたが、やがて、ほうっと息を吐いた。
「そなたが崔氏の直系の血を引く娘だと―、ソンニョは確かに言ったんだな」
キョンシルはそれでもまだ少し躊躇った後、トスの毅然とした貌を見て話を元に戻した。
「お母さんが息を引き取る間際のことよ。この首飾りを渡して、こんなことを言ったの」
キョンシルはミヨンの遺言とも言うべき言葉をそのままトスに伝えた。
トスは眼を見開いたまま話に聞き入っていたが、やがて、ほうっと息を吐いた。
「そなたが崔氏の直系の血を引く娘だと―、ソンニョは確かに言ったんだな」
