
好きな空間
第14章 疑惑
彼の言う通り荷物を取りに来たという理由で家に訪れた。
この家に来たときを思い出しながら、今回は付き人という人ではなく家政婦さんに客室まで案内された。
初めて来たときも春になりかけてた頃だった。
その時と同じようにエルメスのティーカップに紅茶を入れて一礼して、部屋を出て行った。
ソファーに座って紅茶を飲んでいたら、彼の息子が来て
「こんにちは、
態々、申し訳ありません。」
控えめなところも申し訳なさそうな顔も声のトーンも彼に似ていた。
「こちらこそ、申し訳ありません荷物置きっぱなしで…」
慌てないことにした。慌てる必要もないし、もう少し居たい理由が出来たから。
