
喘ぎ声レッスン*SS追加中*
第28章 危篤状態
あたし達が病室のドアを開けると、そこには見た事もないような弱弱しいお父さんの姿があった。
腕に付けるブレスレットを貰った時の『力強い姿』しか見た事がないあたしには、なんだかとても衝撃的で何も言葉にする事が出来ない。
心臓の速さを表すであろう機械音が、一定のリズムで響き渡る。
「お父様は、1時間前からずっと危篤状態で…、医者によるともう一日もつかもたないか、目が覚めるか覚めないか…。
非常に危険な状態みたいです」
ベットの隣に座っていた眼鏡を掛けた女性が、あたし達を見ながらそう言った。
その言葉はちゃんと聞き取れたのに、『意味』が理解出来ない。
死ぬとか、死なないとか。
自分の中では、
よく分からなかった。
身内などに死んだ人がいないあたしには、死を意識した事がなかった。
死とは何か?この魂は一体どこに行ってしまうのか?
そんな事が頭の中をぐるぐるとまわり続けた。
