
喘ぎ声レッスン*SS追加中*
第22章 追いかけてきたのは
これが優だったら良いのに。あたしは泣きそうな思いで彼を見つめた。
彼はあたしの為に追いかけてくれたのに、あたしはとても酷い事を考えてしまう。
これが優だったら良かったのに、
・・・なんて。
ありえない。
あり得ないんだ。
優はあたしの事をもう知らないんだから。赤の他人なんだから。
「梓、俺―――…」
仁にぎゅっと抱きしめられても、抵抗する気力も無かった。
あたしにはもう、生きる希望も生きる意味さえも無いのだから。
「ぅっ…うっ…じ、んっ」
泣きながら唯一出た言葉が、
彼の名前だった。
頼ったら駄目なのに、…あたしは本当に最低なんだ。
仁にすがる事しか出来ない自分が憎い。仁はこんなに優しいのに、どうせあたしは傷付けてしまうんだ。
「じ、ん…ごめん、あたしっ」
「代わりでも良い
…やから泣くな…っ」
仁があたしをゆっくり離した。仁の顔は悲しそうで、寂しそうで。あたしはそれを見て目頭が熱くなった。
