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……どうしてこうなった?

第8章 初デート

「ねぇ、先輩っ! あっちで牧羊犬ショーが始まるみたいですよ!」

すっかり乗ってきた優花は芹沢の手を取り、ショーの会場へと向かう。

牧羊犬は手慣れた様子で走り、人間の指示したところへと羊を追い込んでいく。

「きゃーっ! 可愛いっ! あのワンちゃん、お利口さんですね!」

「よく訓練されてんだなぁ」

いつの間にかデートに乗り気じゃなかった自分の方がはしゃいでいることに優花は気付いていない。


牧場は広大な面積を有しており、羊はそのあちこちでひたすら草をはんでいた。

さすがに羊を見飽きたふたりはベンチに座り、春の日差しの中でまどろんでいた。

「機嫌は直ったか?」

不意に芹沢が尋ねる。

「え? あ、いやっ! まだ許してませんよ、着替え覗かれたのは!」

「はははっ。そうじゃなくてさ、何だか落ちてたじゃん、この間のお前」

「あっ……」

言われて優花は思い出した。

この間の陸奥と橘のやりとりを。

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