
359°
第8章 過去と現在
「ユ…」
「…ごめん、ありがと。もう、寝るね…」
俯いたままユキは拓哉から離れる。
「…ああ、おやすみ…」
拓哉は心配そうな眼差しで、ユキの背中を見つめた。
今、何を言おうとしたのか…
なんとなくわかりつつも、声をかけることはしなかった。
ユキは、ボーダーだ。
感情の起伏が激しく、見捨てられる不安や恐怖心が強い。
堕ちることはしょっちゅうだった。
だが、次の日には必ず立ち直ることが多かった。
だからきっと明日も…
笑顔で自分たちの前で唄ってくれると、拓哉は信じて疑わなかった…。
