
359°
第8章 過去と現在
「…おっと、もうこんな時間か。長居したな」
「陸斗さん…」
「ん?」
「僕にアドバイスしたこと、いずれ後悔するかもしれませんよ」
僕はメガネを押し上げながら、陸斗さんに向かって微笑む。
「…ああ、そん時はギター弾きながら腹踊りでもしてやるよ」
フンと鼻で笑いながら、陸斗さんは部屋を出て行く。
僕は廊下に出て、彼の背中を見送った。
扉を閉めようとすると、ふと廊下の壁にもたれていた中年の男性と目が合う。
「いいねぇ~、お前さん今…すっげぇ、いい目してるぜ?」
彼が誰なのかは…
この時僕はまだ知る由もなかった。
