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春のほどけ…戻れない距離

第1章  「弥生」—はじまりの揺れ

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「本当に懐かしいわねぇ」

「う、うん………」

 わたしは、あの突然の再会の三日後……

『ねえ弥生、娘さんと一緒に、ウチに遊びにきてよぉ…』

 めいのお宅に、娘、潤(じゅん)と、お邪魔した…
 いや、断り切れなかったから。

『じゃぁさぁ、弥生は、ずうっとこっち?…』

『わたしはさぁ、あのあと、ほら、進学して、上京したっきりだからさぁ…』

『うん、そうなのぉ、突然の夫の転勤でさぁ…
 だけどね、夫がわたしの実家じゃ嫌だからってさぁ、このマンションにしたのね…』

『ええっ、潤ちゃんていうのぉっ…
 キャ、うちの息子と同じぃ、うちは純…』

『えーっ、六月生まれたからぁ…
 もうヤダわぁ…
 そこまでぇ、一緒だなんてぇ…』

『え、弥生はシングルなのっ』

『そう、旦那さんが突然ねぇ…』

『…でぇ、今は、実家暮らしで、ええっ、看護師でぇ…』

『すごいわねぇ…
 あ、でも、あの頃から看護師目指してたもんねぇ…』

『やっぱ、弥生は、すごいわぁ…
 わたしなんか、ただの、暇な主婦よぉ……』

 めいは、昔、あの高校時代から変わらない…

 こうして、いつも明るく、一人で話しをし、周りまでをも盛り上げて…

 そして………

 軽くて、近くて、遠慮がなくて…

 だからこそ、逃げ場がない。

「ねぇ……」

「え……」
 
 ここは、キッチンの端…
 リビングからは、少しだけ死角になる位置。


「あ、あの頃みたいに…」

 めいの吐息が、かかり…

「ぇ、め、め…い………」

 めいは、スッと傍らに寄り…

 わたしの…

 腰の奥に、触れてきた……
 
 それは、あの記憶と、同じ場所。

「……っ」

 息が止まる。

「また……さ……」

 囁きは、昔と同じ熱…

 時間が…

 いっきに、遡っていく……

「ま、また…あ、あの頃…みたい…に…さ……」

 違う…

 つながってしまった―――

 

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