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春のほどけ…戻れない距離

第3章 「皐月」—満ちていくもの

 2

「ふぅ………」

 彼は、ベッドの脇で、タバコを吸い…

 吐息混じりにゆっくりと…

 満足気に、紫煙を吐いた。

「ほら、ウチじゃ、タバコも吸えないから…」

「っ…………」

 うつ伏せで、シーツにくるまっている、わたしのうなじを…
 指先で、撫でてくる。

「弥生さん………敏感……だね………」

 その声音が、微かに笑う。

「ぁ…………」

 そう、丸五年振りの…

 オトコの感触だった。

「………久しぶり…」

「……………」

 その指が…
 うなじから、背中へと下りてくる。

「欲しかったんだろ…………」

「…………」

 目を、逃がす。

「めい…じゃ…ちょっと、足らない…か…」

「……ん………」

 指が、背中から、腰へと、ゆっくりと、下り…
 小さく、震えてしまう。

「だから、あれ……か…」

「……ち…が………」

 首を、振る…

「でも……これからはさ…………」

「……ゃ……ん……」

 指先が、再び、沈められ……

「……んん…………」
 
 喘ぎが漏れ……

「ほら、ウチにはさ……」

「…………」

 指の動きに、震え………

「夜勤明けとか、昼間がいいんだよね…」

「ぁ………」

「俺はさ、逆に、こんな早番上がりくらいの夕方が、いいんだよねぇ………」

 そう囁き、指を動かしたまま、唇を寄せてくる………

「…ぁぁ……そ、それは…………」

「いいなぁ、それがいいよね…」

「ん……や……」

「うん、そうしよう…」

 唇から、逃げれない……


「………ね…」



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