
幻想遊園地
第6章 第6話:悪魔
少女にとって、ここで悪魔に魂を奪われるのも、このまま運命に任せて死んでいくのも、さして大きな違いはなかったのです。いえ、むしろ、この突然訪ねてきた奇妙で素敵な悪魔に、進んで命を預けてしまおうとすら思ったのかもしれません。
しかし、悪魔の答えは少女の予想とは違うものでした。
「あ?・・・なんねーよ」
きょとんとした表情で悪魔を見つめる少女でしたが、悪魔はまるであさってのほうを見ながら続けました。
「嬢ちゃんの魂はまだ嬢ちゃんのもんだ」
「だって、お願い、3つ叶えてもらいましたよ?」
「まだひとつ残ってる」
「え・・・だって・・・」
「最後のはノーカンだ。俺も月を見たくなった。
だからここまで来た。
嬢ちゃんに言われるまでもなく、見たくなった・・・それだけだ」
少女は一瞬、ぽかんとしましたが、クスクスと笑いました。
「じゃあ、もうひとつ、願いを考えないといけないですね」
そうして、まあ、どうしましょう、と何事かつぶやきながら、指折り数え始めました。悪魔が耳を澄ますと、その願いの候補というのは『空を飛びたい・・・なんて危ないかしら』『いっしょに踊ってもらおうかしら』『それとも・・・お菓子を食べていただこうかしら』などというものばかりだったのです。
悪魔は額に手を当てて、そっと首を振りました。
そういうことじゃねえんだよなあ・・・
「なあ、嬢ちゃん、無理に3つ叶えなくてもいいんだぜ?
な・・・まあ、また気が向いたら来るからよ、そん時までにでも決めといてくれや」
そう言って、悪魔は眼鏡を再びかけました。
月明かりを返してキラリと光るそれが、悪魔の表情を隠してしまいます。
そして地面を蹴ると、ふわりとその身を宙に躍らせ、テラスの縁に立ちました。人間にとっては軽業のように見えることでも、悪魔である彼にとっては容易いことでした。
そもそも、悪魔というのは、願いを叶える代償として魂を奪う存在ではないのです。『どんな願いでも叶える』という甘い誘いに乗って私利私欲で願いを叶えた人の、その邪な魂を奪って生きるものなのです。
そんな悪魔にとって、清浄で美しく、明るい微笑みで守られている少女の魂は、とてもじゃないけど奪うことなどできないのでした。
・・・まったく、とんだ時間の無駄だったぜ。
しかし、悪魔の答えは少女の予想とは違うものでした。
「あ?・・・なんねーよ」
きょとんとした表情で悪魔を見つめる少女でしたが、悪魔はまるであさってのほうを見ながら続けました。
「嬢ちゃんの魂はまだ嬢ちゃんのもんだ」
「だって、お願い、3つ叶えてもらいましたよ?」
「まだひとつ残ってる」
「え・・・だって・・・」
「最後のはノーカンだ。俺も月を見たくなった。
だからここまで来た。
嬢ちゃんに言われるまでもなく、見たくなった・・・それだけだ」
少女は一瞬、ぽかんとしましたが、クスクスと笑いました。
「じゃあ、もうひとつ、願いを考えないといけないですね」
そうして、まあ、どうしましょう、と何事かつぶやきながら、指折り数え始めました。悪魔が耳を澄ますと、その願いの候補というのは『空を飛びたい・・・なんて危ないかしら』『いっしょに踊ってもらおうかしら』『それとも・・・お菓子を食べていただこうかしら』などというものばかりだったのです。
悪魔は額に手を当てて、そっと首を振りました。
そういうことじゃねえんだよなあ・・・
「なあ、嬢ちゃん、無理に3つ叶えなくてもいいんだぜ?
な・・・まあ、また気が向いたら来るからよ、そん時までにでも決めといてくれや」
そう言って、悪魔は眼鏡を再びかけました。
月明かりを返してキラリと光るそれが、悪魔の表情を隠してしまいます。
そして地面を蹴ると、ふわりとその身を宙に躍らせ、テラスの縁に立ちました。人間にとっては軽業のように見えることでも、悪魔である彼にとっては容易いことでした。
そもそも、悪魔というのは、願いを叶える代償として魂を奪う存在ではないのです。『どんな願いでも叶える』という甘い誘いに乗って私利私欲で願いを叶えた人の、その邪な魂を奪って生きるものなのです。
そんな悪魔にとって、清浄で美しく、明るい微笑みで守られている少女の魂は、とてもじゃないけど奪うことなどできないのでした。
・・・まったく、とんだ時間の無駄だったぜ。

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