Linaria
第1章 夢現つ
「智くーん、起きて」
聞きなれた声に揺さぶられて目を開けると、夢で見た優しい笑顔と目が合った。
「翔ちゃん…来てたの」
「合鍵使わせてもらったよ。おはよう」
「んー…おはよう…」
どうやら既に昼をまわっているようで、窓から射す陽の光が部屋を明るくしていた。
昨日はベッドに入るのが遅かったからか随分と寝てしまっていたらしい。
「何か夢見てたでしょ」
「んえ…?なんで?」
「すっごいニコニコしてた」
少し馬鹿にしたように翔ちゃんは笑った。
「いい夢だったの?」
「えー…どうだろう」
いい夢、なのかはよく分からない。
夢の中の翔ちゃんは笑いかけてくれたけど、結局触れることは出来なかった。
届きそうで届かない、なんてちっとも嬉しくない。
どうせなら触れたい。当たり前だけど。
「ね、翔ちゃん」
そう言いながら手を伸ばした。
翔ちゃんは不思議そうにしながらも俺の手に自分のを重ねた。
多分「起こして」って意味だと勘違いしているであろうその手を、グッと自分の方に引いた。
「えっ、うわっ」
不意をつかれされるがままに倒れてきた体を受け止めて、そのまま抱きしめた。
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