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方位磁石の指す方向。

第12章 scene 11

櫻井side



「もう遅いから泊まってけばぁ?
明日休みなんだし。」

「そんな事言われたって…」


ふわふわとした口調の智くんが
にへらっと笑う。

二宮は風邪気味だからってことで、
俺は智くんの部屋にお邪魔している。


「あ、翔くーん、服俺のでいい?
小さいかな?笑
…あっ、サイズ大きいのあったー」

「お、マジで?
じゃあ泊まってちゃおうかな。」

「ふふ、いいよいいよー。
母ちゃんたちもオッケーって言ってるし。」


…さっきから気になるのは、
二宮のことばかり。

きっと今頃不貞腐れてる。


「智くん、二宮の部屋行ってもいいかな?」

「いいと思うけど。…てか、」


智くんがう〜ん、て唸ってから
俺の方をチラッと見て。


「恋人なのに、
まだ苗字で読んでるの?」

「…え?」

「和は翔くんのこと
下の名前で読んでるのに、
翔くんはなんで苗字なの?」


恋人っぽくないよ。なんて
ふわふわとした笑顔で言われた。

…そりゃぁ、俺だって
下の名前で呼びたいけど。


「…なんて呼べばいいかわかんねぇし。」

「和で良くない?」

「智くんと一緒なのはやだ。」

「え、ひどくない?笑
じゃあ和也でいいじゃん。」

「…考えとく。」

「ふふ、奥手〜」

「うるせ。」


智くんの頭を小突いてから
二宮の部屋へと向かう。


…たしかに、
今まであんまり意識してなかったな。

二宮に寂しい思いをさせていたら
どうしようか。

本当は呼んで欲しかったりするのか?

あ、でも、聞にくいことだしな…。

…どうしようか。

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