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方位磁石の指す方向。

第7章 scene 6

櫻井side



…あちぃ。

このクソ寒い季節にこんなこと思うのは
風邪のせいだからか。


…それとも。

目の前で俺の周りを
うろちょろしてるコイツがいるからなのか。


「翔さん、具合どう?
あ、お腹空いてる?なんか作る?」

「…や、大丈夫…。
迷惑、かけたくないから。」

「ばあかっ。…迷惑かけてよ。
俺、恋人なんだからさ…
翔さん、俺にたっくさん迷惑かけたって
いいんだからね…。」


なんて、俺に抱きつきながら言うから…。

ぽろっと。
思ったことが出てしまった。


「…シたい、」

「…ふぁっ!?」

「っあ、え…っ…ごめんっ、違う!」

「…あ、や、あの…別に、」


別に、って言ったまま、
言葉は紡がれない。

……やべ。

つい、口に出してしまった。


…でもだめだ。
まだできない。

二宮に手を出すことなんて、
できないんだ。

こんなに華奢で、脆くて──…。


とにかく、二宮を抱くことなんてできない。
今の俺にはできないんだよ…

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