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今日も明日も

第65章 見えない鎖 part Ⅵ


「うん。どこかで会ってる気がする」
“何処だったかなぁ“ とぶつぶつ言いながら色々と思い出そうとしている

「えっと、かずくんだっけ。…名前聞いてもいい?」

先輩が直接かずくんに話し掛けると
かずくんがびくん、と大きく体を震わせた

俺にしがみつく手に力が入る

まだ俺以外には、話し掛けられるのが怖いようだ


「先輩、すいません…ちょっと……」

ガタガタと震え出したかずくんを庇いながら、先輩にどう伝えようか考えてたら

「あ、ごめん。無理しなくていい」

尋常ではないかずくんの怯え方を見て、先輩がすぐに話を打ち切った



「色々訳ありみたいだな」

「…すいません」

「俺で良ければ、いつでも相談には乗るから」
“役には立たないだろうけど“

気まずくなった空気を打ち消すように、先輩が笑って見せる

「ありがとうございます」


この、話してる間もかずくんは震えていて
必死に落ち着こうと浅い呼吸を繰り返していた

「かずくん、先輩は優しい人だから大丈夫」

「…ごめんなさい」

きっとかずくんも分かっている

だけど頭が追い付かない、…そんな感じだった

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