
今日も明日も
第65章 見えない鎖 part Ⅵ
「すいません、お待たせしました!」
「ああ、大丈夫。…って、彼は?」
かずくんを見て、先輩が不思議そうな顔をした
「ちょっと訳があって、うちにいるんですよ
…一緒にいいですか?」
大丈夫だろう、と思いながらも
もし断られたらどうしよう…、少しだけ不安になった
「構わないよ。ほら早く乗って」
にっこりと笑って乗車を促す先輩が、かずくんにも優しい笑顔を向ける
かずくんは酷く緊張した顔で、俺にしがみつきながら
それでも “ありがとうございます“ と小さく言う事が出来た
かずくんの様子を見ても、先輩は何も聞かない
むしろ優しく接してくれる
ただ一言だけ「随分可愛い子だね」と言う言葉が
少しだけ引っ掛かった
買い物を済ませる間もかずくんは俺にしがみついている
だけど閉店間際で人が少ないのが幸いだったようだ
ペットショップの中をキョロキョロと見られるようになってきていたかずくんは
やっぱりショーケースの中の仔犬や仔ネコに釘付けになっている
だけど俺は
チラチラとかずくんを見る先輩の視線が気になって仕方なかった
