
今日も明日も
第58章 見えない鎖 part Ⅱ
本当に近い距離だから、かずくんの視界から俺が外れる事はない
そして俺も “大丈夫大丈夫“ なんて言いながらかずくんから視線を逸らさないようにする
ここまでしても、不安そうな様子が治まる様子がないかずくんはどれだけの辛さを体験したんだろう
「もう、いいよ」
目的のものを手にして、すぐに布団から出されたまま動かないかずくんの手を握った
かずくんは泣くくせに自分からは “握ってくれ“ とは求めない
俺から握っても、なかなかそれを握り返さない
それでもこうして握ってあげれば、少しだけ瞳が和らいだのを感じるから、…今はそれでいい
いつか、自分から握ってくれるかな
その不安気な瞳が、本当の笑顔になったらいいのに
…なんて考えて、思わず笑いそうになった
かずくんがずっといる訳じゃないのに
治ったら、自分の家に帰るのに
…でも待てよ?
かずくんに、帰る家はあるの?
このご時世に、携帯はおろか財布すら持っていなかったのに?
しかも季節に合わない洋服だったよね?
