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プリンス×プリンセス

第59章 沈黙の刻

細く開いたドアの隙間に体をねじ込むように部屋に入った。

ここは…ジューク様の自室だ。

中にはルークスさんが作業をしている。

「遅くなりました」

「こっちは大丈夫だ」

その言葉の通り…

ジューク様の部屋の中はあらかた片付けられていて、がらんとしている。

「お一人で全てなさったのですか?」

「いや…元々、あまり私物をお持ちでは無かったようだ」

ポカンとルークスさんを見つめる。

確かに家具は作り付けだし、寝具のカバーなんかも共用のもので構わなければ、リネン室でクリーニング済みのものと交換できる。

でも…私物って、自然に増えていくものじゃないですか?

ジューク様がここに来てから約20年だと聞いた。

20年が段ボール1個で収まってしまうくらいの量でしかないのが…何だかいたたまれなくなる。

「えっと…後は…?」

「ではクローゼットを。支給されたものと私物を分けて…ポケットは全て中を確認してくれ」

「はい」

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