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プリンス×プリンセス

第49章 騙しあい

「部屋でも何も気付かず、お茶を楽しんでおりましたし」

国王はその報告に満足げな笑いを漏らすと

「結婚をして腑抜けたか」

嫌味を口にして、ふん、と鼻を鳴らした。

「まぁ、よい。ならば今が絶好の時だ」

国王がジュークをじっと見つめる。

先程、ディオチェスターを訪問した時の柔和さは一切無くしてしまったような、冷徹な目で。

「お前をフェールロコノへ引き渡した時に為した約束を、今こそ果たそうではないか」

その言葉とその目につられたのか。

ジュークの瞳も、暗い色を帯びていた。

あの日の事は忘れない。

あの日、母と自分に起こった出来事。

そして、その原因も。

「そうですね」

自分に言い聞かせるような声で肯定すると、ジュークは唇を半月状に引き上げた。

「分かりました」

その言葉に、国王は笑みをうかべていた。

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