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プリンス×プリンセス

第45章 痕跡

怪訝そうな表情のディオチェスター様に、ボウルを掲げてみせる。

「テリオス様にと思いまして」

その言葉に、ディオチェスター様が眉を上げて、意外そうに呟いた。

「…お前が?」

これだけ調理に長けた人材がいて、しかも休憩中で。

指示をすればいくらでも調理してもらえるだろう。

お前が作ることもない。

ディオチェスター様がそう言いたいのだろうと容易に想像がついた。

その反応は仕方ないかもしれない。

だけれど、それに気付かない振りをした。

「お体が優れないそうですので、飲みやすいものを、と」

それを聞いて、ディオチェスター様はフッと笑った。

「そうか」

…ん?

ディオチェスター様の表情に、何か引っ掛かるものがあった。

体調を崩したと聞いて、こんな笑い方をするのか?

困ったような、それでいて少し嬉しそうな…

「出来たのか?」

「はい。ですが気に入っていただけるかどうか…」

「飲ませろ」

「は…?」

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