君が書く手紙
第1章 新しい私
やっとこの日が訪れた。
待ちに待った、人生最大のイベントが。
私、坂口麻里は今までにないくらいニコニコして、ちょこんと座っていた。
秋の終わりは、冷たい風が吹き抜ける。
もうすぐやってくるの。
私の季節が。
「麻里ちゃん、調子はどう?」
ドアをノックして入ってきたのは、茶髪のショートヘアの女性。阿部さん。
「ばっちし!だって今日を待ちわびていたんだもの」
「本当に、長かったわねぇ。
麻里ちゃんももう20歳かぁ」
「これで20歳の誕生日、迎えられるんだよね?」
「ええ。そうね。じゃあ行きましょうか!」
「うん」
阿部さんに手を借りて、ゆっくりと立ちあがる。
阿部さんが用意してきてくれた車椅子に腰をおろすと、阿部さんはにこっと笑った。
坂口麻里、19歳。
10代最後の一日は、私の人生最大のイベント。
もうすぐで、大人になる。
もうすぐで、私は元気な身体を手に入れる。
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