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マシュマロボイス

第1章 花が舞う

“その唄”は、ゆっくりと穏やかに始まった。

『踏み出す夢の音を僕らは感じている』

小さい声だけど、聞こえる。
はっとして、大野と目線を合わせる。

そしたら、大野は再びウインクをするように微笑った。

それでも、声は聴こえ続けた。

『ひらひらと花が舞う頃
旅立ちを決めた思いは』

サビに入ったのか、よく通る声がより一層よく聴こえて……

『今 瞳の奥に輝く夢はいつでもいつまでも』

曲が終わったのか、しばらく経っても声は聴こえなかった。

隣を見ると、気持ち良さそうに寝息をたてている大野がいた。

……本当に、子守唄代わりなんだな。

聴こえなくなったら、
寝られないんじゃない?

…………本当、いい声だった。

でも、女子ではなさそう。
多分、男子だと思う。

だけど、高音がめっちゃ綺麗だった。

1つの音が、耳を通り過ぎることなく耳の中に残していく。

その唄の歌詞が、
音と一緒に残るからどうしても


体の芯に響く。

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