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Fallen Angle

第2章 in

届いたのはトレイに乗せられた甘い香りのするクロックムッシュとロイヤルミルクティー。
パンをナイフで切り分け大口を開けて頬張っていると目が合い、穏やかな微笑みを向けられて
「美味しい?」
「うん」 
笑みを返しながら食べ終え、甘いミルクティーを飲み終えると
「行こうか?」
「うん」
男に支払いを任せて、後に続いて店の外に出た。
表に停めてある男の車まで近づくと当たり前のように助手席の扉が開けられ、先に乗るように促される。
シートに体を沈めると男は運転席に座り、手を握ると車は走り出した。
シフトを変える度に手が離れ、また握るを繰り返しながらドライブも兼ねて郊外のショッピングモールへ走らせる。
広い駐車場に停めると手を繋いでモール街を歩き、目的の店までの道のりを楽しむ。
季節を先走る春模様の店を指差して
「ここに寄ってもいい?買いたい服があるから」
「行っておいで。ソファーに座って待ってるよ」
繋いでいた手が離れると、男は店舗の前にある大きなソファーに腰をおろした。
「また後でね」
小さく手を振って店に入った。
目についたワンピースを数枚手に取り、腕に掛けて店内を歩いていると
「お預かりしましょうか?」
隣に来た店員に
「お願いします」
預けると店員を連れて歩きながら、片っ端から鏡の前で確認しては渡していく。
キャッシャーの前に移動してワンピースが畳まれて並べられるのをぼんやりと眺めていると横からカードが差し出され
「これで」
男が店員に手渡した。
「いいの?でもどうして?」
「蓮の嬉しそうな顔が見たかったからかな」
また顔に皺を作ってはにかんだ。
支払いを済ませると男が大きな紙袋を受け取り、笑顔の店員に見送られると再び手を繋いだ。
「蓮は買い物が早いんだね。女の子はみんなゆっくり選ぶものだと思っていたから…」
「だって買い物を早く終わらせたらずっと手を握っていられるでしょ?」
斜め上を見上げて満面の笑みを向けると
「…そうだね」
男は頬を赤らめて俯いた。
車まで戻るとまた扉が開けられシートに体を沈めるとミラー越しに目が合い
「時間が作れなくてごめんね」
「ううん。短い時間でも一緒にいられたからいいの」
シフトを握る男の手に指先を重ねた。
車は来た道とは違う方向に走り出した。
「どこに行くの?」
「ちょっと寄りたい所があるから」
皺を刻む男の笑顔に不安が過ぎる。

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