
愛の裏側
第3章 *すれ違う心
暴れる私を抑える誰か。
『――…やだっ!ねぇ、―――っ!』
『――…藍っ。また、また…どこかで…っ』
…男の子?
知らない子だ。
でもどこかで――…
思い出せない。
とても大切な、大事な人だったような気がする。
「―――い…―あ…、い。藍!」
「…ん…?」
「どうした。もう7時だぞ」
私を揺さぶり起こすお父さん。
目をこすりながらベッドから腰を下ろすと、私はハッとした。
「ご、ごめんお父さん!…昨日、寝るの遅かったから…」
いつも、6時にお父さんを起こして朝食をつくっておくのが私の仕事なのにも関わらず、
今日は寝坊してしまった。
昨日、未央とのことで頭がいっぱいでなかなか眠れず、眠りに落ちたのは多分2時頃だった。
「本当にごめん!今目玉焼きだけでも作るから…」
「いいよ。…パン焼いたから、食べて行きなさい」
私は思わず目を見開いた。
お父さんが、そんなことをするなんて珍しい。
ましてや料理が下手だから、卵焼きすらまともに作れないほどなのに。
