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ただいま。

第1章 余命宣告

一通りのことを話すと、新は私よりも愕然としていた。
私が宣告されたってより、これじゃあ新が宣告されたみたいだねって笑ったら、
「笑い事じゃねえよ・・」って泣かれてしまった。

泣かせるつもりはなかった。
笑わせたいから笑ったのに。

「ねぇ、新」
「なんだよ・・」
「私、幸せだよ」
「なんでそんなこと・・」
「今だから。」
「何で今なんだよ・・」
「今言わなくちゃ、いけない気がしたの。」

本当に、たったそれだけ。
それ以外の理由はない。

「優希・・」
「新、私のこと嫌いになった?もう嫌になったでしょ?」

そうなって当然だもの、と笑うと新はバカじゃねえのと泣き顔のまま私に必死に笑ってくれた。

「違うの?」
「違うに決まってんじゃん。こんなことで嫌うとかアホらし。」
「・・新」
「何?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「新」
「何?」
「大好き」
「知ってるよ」


新は、私をぎゅっと抱きしめてから笑って私に言った。

「思い出を作らないか」


現実の波が押し寄せてくる。
もう、死ぬ準備を始めなさいといわんばかりの波が。

「・・え?」
「やりたかったことを存分にやろう」
「・・新、仕事あるじゃん」
「休む」
「はあ?」
「だめ?」
「・・いいの?」
「いいよ、大丈夫。」


ねえ、人は死ぬってわかると本当に弱くなるんだね・・。
今の私、ちょっと口を開けば泣き言しか言わないくらい、弱ってる。
新から離れたくないよって、
死にたくないよって、
まだたくさん生きていたいよって。


「私ね」
「うん?」
「まだ、死にたくないなあ」
「生きて」
「頑張る」
「うん」


明日はどこにいこうかって新に聞かれたけど、どこでもよかった。
一緒に少しでも長くいられるなら、もうどこだって構わなかった。

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