
仰せのままに
第3章 想い人
「はぁ。」
私の溜め息なんて、真っ暗な夜空ではすぐに消える。
星は、街が明るすぎて見えないけれど、
月は、分かる。
部屋の電気が消えてる中、物音がして、
ベランダから、振り返る。
と、
「あ、わりぃ。ノック聞こえなかった?」
「…和也様。」
「ヒマだから、遊びに来ちゃった。」
「こんな時間まで起きていらっしゃったら、
そりゃあ、寝坊もしますね。」
「だって、夜型だし。いーんだよ。
どうせ、起こしてくれんだろ?」
その笑顔に、私がとても弱いことなんて、
きっと和也様は、少しも知らない。
「月、キレイだな。」
「はい。残念ながら星は、見れませんが。」
「もっと暗かったら、良いのか。」
「でも、ちょうど良いじゃないですか。」
「そうだな。」
ホントは、“貴方と星を見に行きたい”けれど、
それが、叶わぬことは知ってる。
「あのさ、、」
「はい。なんでしょう?」
暗闇の中、
少し、紅潮している顔を見つめ、
これから言われることを、知っていながら、
私は聞く。
「俺、付き合ってる奴いるんだ。」
