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花火の秘密

第1章 花火の秘密


足元が窮屈になりなかなか前に進めない。しかも一緒にお買い上げされた下駄が余計に歩きにくくしている。

カラコロと心地い音色を奏でて、僕は亮ちゃんと手を繋いで歩いている。この様子をはたから見た光景を思い浮かべると泣きそうになる。

なに?これはあの時似合ってる以外になんも言えなかった仕返しか?ここまでしなくてもいいやんか…。

「ヤス。なんか食べるか。何がいい?焼きそば?たこ焼?フランクフルトとかあるけど?」

「亮ちゃん。なんで女もんなん…。」

「めっちゃ似合ってるやん。」

「そうゆうことやなくて、これじゃあみんなに顔会わせられへんやん。」

「みんななら大丈夫やろ。」

「その根拠はどこから…?」

大きくため息をついて、立ち止まる僕に亮ちゃんは頭を撫でて笑顔を見せた。

「かわいいから。」

その笑顔はずるくて、僕が心のうちに溜めていた感情はすべて揉み消された。

「あ、なあなあ、ヤスもうすぐ誕生日やろ?」

「え、まあ。」

9月11日。1週間と四日後のこと。

「誕生日プレゼント、その浴衣な。」

「いらん!こんなんもう使われへん。」

「え?使わんの?」

「当たり前や!!」

なぜか笑顔が溢れてくる。こんなに嫌なのに、なぜか清々しい。

手から伝わる暖かさもだんだん心地よくなってきた。

屋台が並ぶ石畳に戻ると、人が見事に居なくなってた。

「静かやな。」

「もうすぐ花火が始まるからみんな広場に集まってるんや。」

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