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背徳の雨

第5章 儚く、脆く



もう寮を出て何日が経っただろう。
私は彼が静岡へ逃げられるよう
一緒に寮を出て、支度をしていた。
お金を集めながら
色んな作戦を練った。

そして何日経ったかもわからない程
私達は歩き回り、
色んな場所を転々として逃げ回った。

しかしここ最近白狐の顔に
酷く疲労の色が窺えた。

それも仕方がない。
私達は何日も飲まず食わずで
一睡も眠りにつけていなかった。

歩き続けの白狐の青白い顔。
もう限界に近かった。

私も頭痛や目眩が酷くて
正直立っていられなかった。
白狐も辛そうで休み休み歩きながら
色んな場所を回った。

でも今日位までが
限界だと感じていた。

頭が割れてしまうのでは思う位
痛くて、辛い。
身体の節々が痛み、
座るのも辛くなってきた。

泣きたい。
何故か唐突にそう思った。
帰りたい。
もう嫌だ。
思ってもそんな事、到底言えない。
だって白狐が頑張っている。
私も頑張らなきゃ…。

「もう少しだから…」

歩道橋の階段に座り、少し休憩して
彼を心配させたくないと
酷い目眩の中、無理矢理立ち上がり
よろついた足で歩き出す。
が、

前が、見えない。
灰色に歪んだ視界が私の邪魔をする。

声も出ない。
耳も聞こえない。

まずい。
そう思った時には遅かった。

私は階段から落ちていた。

でも全く痛みは感じられない。

「───っ」

遠くで聞こえた、声。
今の私には上手く聞き取れない。

冷たい。
自分の身体から
血の気が引いていくのが感じられて

私の意識は硝子細工のように
脆く、儚く散った。

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