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クリスマスに奇跡を

第1章 クリスマスに奇跡を

どれくらい眠っていたのだろうか。
それでもまだ眠っていたい気がする。
あの一瞬の出来事が夢のように思えていた。


重たげな瞼を押し上げ、ぼんやりと開いた瞳に移ったのは白い天井、そして鼻につく医薬品の匂い。
あんな事の後だ、病院に運ばれるのは必然だ。


落胆が胸を襲う。
夢じゃなかったのか。
だが、どうにも身体が動かない。
動かそうとすれば激痛が走る。
辛うじて痛みなく動かせる首を巡らせると、隣のベッドには沢山のチューブに繋がれた悟がいた。


「さと・・・る」


か細い声に部屋にいた看護師が悟のそばを離れ、顔を覗かせる。
大丈夫かと問われたが、俺は自分の事よりも悟の方が気になり、反対に質問を返していた。


看護師の話では悟は打撲による脳の障害と骨折で未だに目を醒まさないと言う。
看護師は俺を安心させるためか、微笑みを見せて大丈夫よと言う。


たが、鼻や口、腕や指、それに胸にまでチューブが繋がっている。
ましてや、口から出ているチューブには器械まで付いているんだ。
知識がなくても悟の状態が危ない事はわかる。


それに俺も、上半身をコルセットに覆われ、両足はギプスに固定されて吊られていた。
大丈夫な状態とは言い難かった。




毎日のように見舞いに来る両親や友人達が顔を歪ませ沈んだ表情で俺達を見る。
事情聴取に来た警察官までもが憐れんだ瞳で二人を見ている様に思えた。


俺達は男同士だ、結ばれてはいけなかったのか。
俺達にとって初めてのクリスマスだったのだぞ。
神の悪戯にしては性質が悪すぎる。


看護師から車を運転していた者の遺族が面会に来たと伝えられた。
悟がこんな状態なのだ会える訳がない。
それからも遺族は毎日のように来ていたが、俺は面会を断り続けた。



            

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