All Arounder
第32章 Go Mad
「…どうって…?」
「好きか?」
大志は口を結んだ
少し視線を落とすと、みるみるうちに大志の顔は赤らんでいった
…あらま、こいつ照れてんじゃねーか
「好きなんだろ」
「そう言うてめぇはどうなんだよ…?///」
「好きだ」
「…」
部屋の中は静かだった
二人の声だけが、本から飛び出した絵のように
強調して聞こえた
「もうひとつ聞きてーんだけどよ…」
「?」
「…大志は…、もう昔のお前じゃないのか?」
「はあ??」
笑い飛ばしてやろうとしたが、井上の目があまりにも真剣だったので
そうもいかなかった
「どういう意味だよ」
「喧嘩とか…殴り合い…とか、もうお前は愉しめねーのか?」
「…何が言いてぇんだ?」
「俺は…大志が人を殴る時の愉しそうな顔を見てーんだよ…」
「…変態にもほどがあんだろ…」
…理由は教えてくんねーかな…?
そう思った時だった
「そりゃあ、愉しくねぇから愉しそうに出来ねぇだけだ」
「へ?」
愉しくない?
マジで、喧嘩自体が愉しくないってのか…?
姫ちゃんがそばにいるから、優しさを取り戻した―――
みたいなドラマチックなことじゃなくて…
「マジで…愉しくねーの?」
「ああ。
だって最近、強い奴いねぇじゃん」
大志の言葉に、井上は目をパチクリとさせた
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