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願わくば、いつまでもこのままで

第9章 とまれない、とまらない





会いたいと思う



会いたいと願う







自分から会いにいく

なんてことはできないけれど




また、いつもみたいに

偶然に……







「……なんて、あほか。俺は」






バイクに跨り道を行く。


鋭い風が全身を包んで痛かった。




今年は寒くなりそうだな







駐輪場にバイクを停めて
少し錆びたアパートの階段を上る。




気持ちのせいか
どうも下ばかり向いていて




ドンッ




「って…」



「きゃ…」






前から人が来ていることに


気がつかなかった






「あぁ、すいません……」





衝動で後退した身体。


少し驚きながらも顔をあげる。





「いえ…こちらこそ……」





相手はぶつかったことで顔にあてていた手をおろし顔をあげた。






「あっ……」






声が出たのは相手の方だった。



俺は口は開いたものの声は出なくて。






「えっと、その……おかえりなさい……?」




と、彼女は少し首をかしげた。


子供っぽく。









また、偶然はおこったようだ









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