刑事とJK
第46章 点を結ぶと
―――――――――――
「母ちゃん、また啓太のやつ本読んでるぞ」
「信太、啓太は本を読むのが好きなんだよ
そっとしておいてあげなよ?」
地面にねっころがって
嬉しそうに読書をしているのは
弟の 村上啓太(ムラカミ ケイタ)
その弟をつまらなさそうに
見ていたのは
兄の村上信太(ムラカミ シンタ)だった
信太は啓太のもとへ、
どたどたと四つん這いで近づいた
「啓太、お前こんな難しい漢字が読めるのか?」
「読めるよ、これは夏目漱石の
"こころ"っていう作品でね。
兄ちゃんも読む?楽しいよ」
啓太はズイッと本を差し出した
「うえ~いらねー、
本なんて大嫌いだ」
信太はそれを押し返した
その頃、信太は8才
啓太はまだ4才であった
「楽しいのに…」
「何をしてるんだ?二人とも」
「ぐえっ」
信太の上に乗っかってきたのは、父親だった
「父ちゃん重いよ、どいて!!」
「はは、すまんすまん。
ところで、啓太は何を読んでるんだ?」
父親は信太から下りながら、
本を覗き込んだ
「…///」
啓太は恥ずかしくなって
本を自分の腹の下に隠す
しかし、父親にあっさりひっくり返されて
本を取り上げられてしまった
「こころ…か」
「父ちゃん、返して、僕のんだよ!!」
啓太は飛びつくが、
手は全然本まで届かない
「啓太、これはもともと父ちゃんの本だから、
そういう時は"貸してください"って言うんだぞ?」
「…貸してください…」
父親はニコッと笑って啓太の頭を撫で、
本を渡してやった
「よし、啓太はいい子だな」
「父ちゃん、おれも褒めてよ!!」
信太が父親の服を引っ張る
「よおしよし、信太もいい子だぞー!!」
父親は信太を抱え上げた
そして、啓太にもう一言添えた
「啓太、それ読み終わったら、
父ちゃんがもっと面白い本を貸してやろう」
「ほんと!?」
啓太は目を輝かせた
「ああ」
この時から父親は、
啓太のずば抜けた頭脳に気づいていたのだ
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