刑事とJK
第97章 根城の裏で笑う者
「…まぁいい。
それで、逃げた後はどうしたんだ?」
「あ、近くにいた方に助けを求めて、一緒に殺害現場へ足を戻しました」
窓から差し込む朝の光が、嘉山の背中を照らす。
後光が差しているような錯覚に、斉藤は目頭を押さえた。
「―――そのとき一緒にいた人間は?」
「藪内(ヤブウチ)刑事です」
「…藪内さんか…」
藪内も同様、刑事課一課のひとりであり、斉藤とは良く知った仲だ。
勤勉な性格から、藪内が夜遅くまで署内に残っていたのも納得できる。
「それから?」
「藪内刑事が率先して現場を…僕は他の人にも応援を頼もうと、走り回ってましたね…」
「なるほどな…」
斉藤は椅子にもたれ掛かった。
反動をつけて立ち上がると、ついて来るように嘉山に目配せする。
「な、何でしょうか?」
「何でしょうかじゃねぇ、現場検証だ」
それ以上口を開かなかった斉藤は、早足で部屋を出る。
「あ、待ってください!!」
嘉山はその後ろを、急いでついていった。
「…今回の事件、斉藤には易しかったりして…」
なんてな、と微笑を漏らした藤野は、二人が進んでいった廊下を眺めた。
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