
手紙~天国のあなたへ~
第3章 血に濡れた鳳凰
留花が眼を見開いていると、男は笑った。
「そなたの名を私は知らない」
「留花、と申します」
「留花か。良い名だ。花というなら、そなたは何の花であろうか」
男が愉しげに言うのに、留花も微笑む。
「私は綺麗でもないし、花になんて到底たとえられませんけれど、子どもの頃、忘れられない想い出があります」
「うん? それは是非、聞きたい。どのような想い出なのか教えてくれ」
身を乗り出す男は社交辞令だけではなく、心底から興味があるようだ。
「私が憶えている両親との記憶は多分、それがたった一つだけなのだと思うのですが、いつだったのでしょう。確か夏のことだと思うので、父と母が亡くなった年の夏ではなかったのかしら」
「そなたの名を私は知らない」
「留花、と申します」
「留花か。良い名だ。花というなら、そなたは何の花であろうか」
男が愉しげに言うのに、留花も微笑む。
「私は綺麗でもないし、花になんて到底たとえられませんけれど、子どもの頃、忘れられない想い出があります」
「うん? それは是非、聞きたい。どのような想い出なのか教えてくれ」
身を乗り出す男は社交辞令だけではなく、心底から興味があるようだ。
「私が憶えている両親との記憶は多分、それがたった一つだけなのだと思うのですが、いつだったのでしょう。確か夏のことだと思うので、父と母が亡くなった年の夏ではなかったのかしら」
