向かいのお兄さん
第57章 共に歩んで
「あらこんにちは」
その一声は、鋭く且つ温かく空気の合間を縫いながら
あたしの耳へと飛び込んできた
『…この前の…』
あたしは自分の取っていた行動を恥じらいながらも、この前この場所で出会った"あの女性"の方を向いた
まさかまた出会うだなんて思っていなかったから、あたしの目は大きく開いていたに違いない
「久しぶりね、あなたもよくここに来るの?」
女性は小さな歩幅で、少しずつあたしとの距離を縮めてきた
『はい…なんか、無性にここに来たくなる時があるんです』
最近は誰かさんのせいで特に…
「怒ってるの?」
『イライラ…です』
「似たようなものでしょ?」
この人の微笑みは
心が和んだ
不思議だ
本当に不思議な人だ
あたしはしゃがんだまま
女性はその傍で立ったまま
また
どうでもいいような話が始まった
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