
向かいのお兄さん
第49章 幼いお前
『あたしのせぃで…死んじゃった…あたしのせぃで…』
胸の中で
そうやって
何度も何度も唱える
「…」
俺の服を掴む手に力が入るごとに
俺は美咲の頭を、自分に押し付けた
『あたしが…拾ったりしなかったら…きっとお母さんが…助けに来た、のに…』
美咲のこういう性格って
昔っからだったんだな
「…美咲、聞いて?」
俺は少し強引に
美咲の肩を掴んで離した
涙でぐしゃぐしゃになった美咲の顔は
どうしても俺の顔を見たくないらしく
始終俯いているようにさえ見えた
「美咲は悪くないよ」
どうしてもそれを伝えたくて
俺は、親指で美咲の涙を拭いながら
頬を撫でて
こっち向かせた
「美咲は悪くないから…泣かないで」
『…だっ…て…』
俺の頼みを聞き入れたのか
美咲は寸でのところで泣くのを我慢した
