向かいのお兄さん
第48章 君が初めて
学校には明かりがともされていなかった
月だけが異様なくらい明るかったから
歩けないことはなかった
『…いつまで手、握ってんのさ』
あたしは掴まれている手を見つめた
年下のくせに
手…大きい…
「握ってほしいのかと思ったから」
グランドの端を
歩いていく
二人分の足音だけが
心地好く耳に入ってくる
「…あんた、名前何?」
『…』
ちょっとだけ
笑いながら言ったんだと思う
顔はよそを向いていて見えなかったけれど
声の調子がそんな感じしたし
握ってくれていた手には
さらに力が入った
やっぱり…直也には敵わないや
『あたしはね…――――』
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