
向かいのお兄さん
第36章 どっち
直也は出口の方にちらりと目をやってから、乱暴にかっちゃんを突き放した
「ったく…」
乱れた服をパッパと直し、直也の背中を見送る
直也は肩越しにこちらを見ると、
いっそう鬼のような形相で睨みつけ
そうして更衣室を出ていった
「直也ー、何してたのー?」
「何でもない」
ふたりの会話が小さくなっていき
やっとかっちゃんは息を吐いた
「おー怖っ」
荒れた更衣室を眺め、改めて直也のことを振り返る
…どうやら、訳ありって感じか?
「お疲れ様ー…って、かっちゃん、何コレ!?」
仕事を終えた和樹が入ってきて、眼前の光景に目を剥いた
「しかも…かっちゃん口から血が出てんじゃん!!」
「え?ああ…」
服の袖で、おおざっぱに拭き取る
「こんなもんは、別にどうってことないし」
適当に着替えを済ませると、かっちゃんは早々と出ていった
