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↑逆転↓御斗戯世界

第9章 ボンジュール、灰かぶり

【Side: 璃斗】


「そういえば、リトが会いたい人ってどんな人?」

暫く歩いた後、サンドリヨンが私にそう言った。出会ってまだそれほどたってないのに、もうすっかり友達になった。


そう聞かれて、私が真っ先に思い浮かんだのは、それは…

「ギャルゲーが好きで、変態で五月蝿くて人懐っこくてしつこくて無駄にイケメンで、でも面白くて明るくて優しくて…」

「リト………」

脳裏に威王の笑顔が浮かぶ。いつだって一緒にいて、双子のようだった威王。今どうしてるかな…もう凄い歳上だったりして。で、私の知らない人と結婚してて、子供がいて、それで……ちゃんと、生きていてくれているかな。私のこと、覚えてるのかな。

その時、不意に抱き締められた。もちろん、サンドリヨンに。

マントの上から腕を回され、結構力強く抱き締めらている。

「え、あの…」

「泣いちゃ駄目だ。」

そこで、私は泣いてたんだと気付いた。涙を流していたなんて自分でも全く気付かなかった。普段全然泣かないんだけどな…。自分でも知らないうちにホームシック的なやつになっていたのかな。サンドリヨンは心配してくれたのね。やっぱりいい人。


「サンドリヨン…」

「泣いちゃ駄目だ。幸せが一緒に流れちゃうぞ。」

サンドリヨンが優しすぎてまた涙が出そうになる。ほんと、性格に似合わず紳士ね。

目をごしごしと擦ると、腕が離され、サンドリヨンから解放された。と、同時に目を擦っていた腕を掴まれる。そして、涙のたまった瞼に、サンドリヨンの空いた右手の人差し指が触れた。

「目、こすると痛いだろ?」

にっこりと笑って涙を掬ってくれた。もちろん、そんなことをされて照れないはずがないわけで。

「え、と……ありがとう…。」

「どういたしまして!さっ、元気だして行こうぜ。」

何事もなかったかのように歩き出すサンドリヨンに対して、現在進行形で真っ赤であろう私が思ったことはただ一つ。

天然タラシって怖いわ…。

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