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BL~中編・長編集~

第18章 バラ園

「確かに、最初話しかけられた時は怖い人だなぁと、思いました。 でも…」

もう一度真さんを振り返り、少し微笑みながら言った。

「真さんは、本当は優しい人なんだなぁと思ったんです。」

「優しい…?」

真さんの問いに俺は「はい。」と、頷いた。

「優しくない人は、あんな風に愛おしそうに花に触れませんから…」

「……」

真さんが黙り込んだのを見て、俺は慌てて言葉を付け足した。

「あっ、すみません…なんか、偉そうに…」

俺の謝罪を聞いても、真さんは黙ったままなにか考え込んでいた。

そんな真さんを見て、俺は真さんへの想いを素直に伝える。

「それに…真さんは俺の人生を救ってくれた恩人でもあり、憧れでもあるんです。」

「救った…?」

真さんはそんな事した覚えがないのだろう。
不思議そうに首を傾げた。

「はい。 実は俺…中学生の時まで父さんが大嫌いだったんです。
毎日毎日他人の庭の手入れなんかして、なにが楽しいんだろうって…
父さんに反抗してなのか、花もその時まで嫌いで…

父さんに支えられて生きていた自覚はありました。でも…花なんかに魅せられる父さんの気持ちがその時はわからなかった。

父さんは、俺に庭師の仕事を継いでほしいとずっと言ってて、俺はそんな父さんにずっと反抗してました。
だから、中学生の時からグレてて、このままじゃ高校にも行けないって教師にも言われてたんです。

その時は、別に高校なんか行かなくてもいいやって思ってたんです。」

俺は真さんを見て、「馬鹿ですよね。」と言って笑った。

真さんは何も言わず、黙って俺の話を聞いてくれていた。

「でも、中二もそろそろ終わるなって時…真さんがテレビに出ているのを見たんです。」

真さんもその日の事を覚えていたのか、少し驚いた。

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