
恋ばか
第29章 ~好きになっちゃいけない人~
「自分一人で抱え込むな。」
「…ッ…ふっ…」
ユイは、俺の頭を撫でてくれた。
「もっと人を頼れよ。」
「ユイっ…」
授業開始を告げるチャイムが鳴るまで、俺は泣き続けた。
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「じゃあな、春架。」
「じゃあね。」
HRも終わって教室から出ると、見慣れた姿が。
「…一臣さん?」
「こんにちは、春架君。」
高一の担任なのに、なんで中等部に?
「どうしたんですか?」
「ちょっと聞きたいことがあって。」
女子が歓声を上げる。
「なんですか?」
「実は…」
無理もない。
一臣さんは、先生方の中で断トツでかっこいいのだから。
「境を知らない?」
「え?」
一臣さんは、すごく深刻そうな顔をした。
「昼休みが終わった後から、いなくなって…」
「え!?」
境兄ちゃんが!!?
「屋敷の方にも戻ってないみたいなんだ。」
家にも帰ってない…じゃあ、どこに?
「知らないです。 昼休みは亮さんといたんじゃ…」
「亮にも聞いたんだけど…」
一臣さんの話によると、境兄ちゃんは亮さんと生徒会の仕事をしてる時、途中でトイレに立ったらしく、それ以降戻ってこなかったとか。
「携帯に連絡は?」
「何回もしたけど、電源が切れてて。」
それじゃあ、境兄ちゃんを探しようがない。
「俺も探します。」
「いや…春架君は、家に帰って休んだ方がいいよ。」
「でも…」と反論しようとすると、一臣さんは優しく微笑んだ。
