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アルカナの抄 時の息吹

第3章 「運命の輪」逆位置

だが、その道中、はたと立ち止まる。これを渡すには、話さなければならない。話したくない、思い出したくないことを。自分の…弱みを。さらけ出さなければならない。

王には、それがとても怖かった。特に…彼女に知られることが。なぜだろう。…どうすればいいのか。

答えを見つけ出せないまま、王はゆっくりと歩を進めた。





「やあ」
どこかで聞いた声に、あたしは振り向く。青年が立っていた。兵士服を着ているので一瞬わからなかったが、あの青年だった。

「ああ…いつぞやの。どうも」

「いつもあそこで本を読んでるの?」
いつものおばさんキラースマイルを浮かべて、青年は言った。

「自分の部屋に持って帰ることが多いわね」

「本、好きなんだ?」

「そういうわけでもないわ。調べたいことがあって、読んでるの。…ねえ、それよりあなた」
崩れないキラースマイルに、あることを思い出したあたしはニヤリとする。

「ん?」

「罪な男ね~!」
茶化すように言った。青年は、何のことかまだわかっていない様子だった。

「え?」

「あら、気づいてないの?それもまた罪ね」

「何のことだろう」

「まぁいいわ。あたしから言うのもあれだし」
なるべく早く気づいてあげてよ、と笑う。青年は、はてなを浮かべたままだった。

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