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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第23章 揺れる心

 ―ずっと、俺だけの騒馬でいてくれないか。
 囁きと共にわずかに力のこもった手の温かさに、香花の唇から洩れ出た声は、もう、言葉をなさなかった。
 熱くなった眼の奥から溢れた涙が頬を濡らす。喉の奥から込み上げる嗚咽は、止めようもなく身体を震わせる。
「ごめんなさい」
 やっとの想いで絞り出した謝罪へ、無言のまま返されてきた頭を撫でる手の優しさに、香花はいっそう溢れ出る涙に咽んだ。

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