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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 夫人はかつて良人真悦を光王の母蓮(ヨン)月(ウォル)に奪われそうになったという過去がある。もっとも、ヨンウォル自身は当時は許嫁であった妙鈴から真悦を奪うつもりなどさらさらなく、真悦当人がヨンウォルを真剣に愛していただけの話だ。が、妙鈴はそのときのことをいまだに根に持っている。
 真悦は本心はどうあれ、ヨンウォルを棄て妙鈴を選んだのだから、今更、二十九年も前のことでヨンウォルの息子である光王に辛く当たる必要もないと思うのだが、誇り高い人だから、真悦が自分よりもヨンウォルを愛していたということに我慢がならないのだ。
 成家で暮らすようになってからまだふた月余りだが、妙鈴の態度は軟化するどころか、かえって日々、風当たりは強くなる一方だ。

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