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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 香花は実の母よりも、実は、このしたたかな叔母に似ている。元々、丹花と香丹姉妹は双子と間違われるほど瓜二つだった。母の美貌をそっくりそのまま受け継いだ香花が母の妹香丹に似ているのは当然なのだ。
 叔母が嫁して生んだ叔母自身の娘よりも姪の香花の方が叔母に似ているのだから。
「叔母上さま」
 香花は居住まいを正し、叔母を真っすぐに見つめる。浮かんだ涙を手巾でぬぐっていた叔母が眼を見開いた。
「長らくご心配をおかけしましたが、何とか、こうして都に戻ってくることが叶いました。これもすべては叔母上さまのお陰にございます。改めてお礼を申し上げます」
 二年前、この人がひそかに崔氏の屋敷を訪ねてくれなかったら―、自らも咎められるのを覚悟で逢いにきてくれなかったら、今頃、香花はどうなっていたか判らない。当時、屋敷の主人明善は国王完(ワン)宗(ジヨン)の烈しい怒りを買い、義(ウィ)禁(グム)府(フ)に囚われの身となっていた。のみではなく、明善の二人の子どもたちの家庭教師である香花自身もまた、いつ連行されるか判らない状態であった。

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