
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
一方、妓房に乗り込んでいった乳母はヨンウォルを呼び出すと、
―この泥棒猫ッ。
と、いきなりヨンウォルの頬を打った。
あまりのなりゆきに言葉もないヨンウォルを一方的に貶める言葉の数々を撒き散らし、挙げ句に〝成家の若さまは、お前などのような賤しい女に付きまとわれて、迷惑なさっている〟と告げたのだ。その時、〝大勢の男と日毎、夜毎交わる身持ちの悪い妓生の孕んだ子など、誰の種か判らない〟という例の科白がどういうわけか真悦自身の言葉として乳母の口から語られたのである。
―成家の若さまは、お前の腹の子など、絶対に我が子とは認めぬとおっしゃっている。
乳母は立ちはだかり、うなだれるヨンウォルを真上から憎しみを込めた眼で睥睨しながら、居丈高に言い放った。
恐らく、この乳母も自分がお仕えするお嬢さま大事の一心だったに相違ない。お嬢さま可愛さあまりのこのひと言が後に、どれほどの波紋を巻き起こすかも判らずに、愚かにも言い放ったのだ。
―この泥棒猫ッ。
と、いきなりヨンウォルの頬を打った。
あまりのなりゆきに言葉もないヨンウォルを一方的に貶める言葉の数々を撒き散らし、挙げ句に〝成家の若さまは、お前などのような賤しい女に付きまとわれて、迷惑なさっている〟と告げたのだ。その時、〝大勢の男と日毎、夜毎交わる身持ちの悪い妓生の孕んだ子など、誰の種か判らない〟という例の科白がどういうわけか真悦自身の言葉として乳母の口から語られたのである。
―成家の若さまは、お前の腹の子など、絶対に我が子とは認めぬとおっしゃっている。
乳母は立ちはだかり、うなだれるヨンウォルを真上から憎しみを込めた眼で睥睨しながら、居丈高に言い放った。
恐らく、この乳母も自分がお仕えするお嬢さま大事の一心だったに相違ない。お嬢さま可愛さあまりのこのひと言が後に、どれほどの波紋を巻き起こすかも判らずに、愚かにも言い放ったのだ。
