
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
「―女房。光王、この娘御はそなたの妻なのか?」
流石に愕きを隠せない男に、光王は事もなげに頷いた。
「ああ、そうだよ。俺たちゃ、まだ新婚なんだ。そうと判ったら、無粋な真似はせずに、とっとと帰りやがれ」
「光王」
見かねて、香花が間に割って入った。
この際、光王に〝女房〟だと紹介された嬉しさや戸惑いよりも、光王のあまりの冷淡さが気がかりだった。
普段から愛想の良いこの男がここまで容赦なく他人を追いつめるのを見たことがない。
一体、都から来たという男は、何者なのだろう。香花の疑念が急速に膨らんでゆく。
「光王、頼む。話だけでも―」
「煩いッ、帰れと言ってるのが判らないのか?」
光王の切れ長の双眸が凶暴な光を宿してきらめいた。
「俺は今更、お前の顔なんて、見たくもねえんだよ。頼むから、俺が何かしでかさない中に、帰れと言ったら、帰ってくれ」
最後の方は振り絞るような声だった。
流石に愕きを隠せない男に、光王は事もなげに頷いた。
「ああ、そうだよ。俺たちゃ、まだ新婚なんだ。そうと判ったら、無粋な真似はせずに、とっとと帰りやがれ」
「光王」
見かねて、香花が間に割って入った。
この際、光王に〝女房〟だと紹介された嬉しさや戸惑いよりも、光王のあまりの冷淡さが気がかりだった。
普段から愛想の良いこの男がここまで容赦なく他人を追いつめるのを見たことがない。
一体、都から来たという男は、何者なのだろう。香花の疑念が急速に膨らんでゆく。
「光王、頼む。話だけでも―」
「煩いッ、帰れと言ってるのが判らないのか?」
光王の切れ長の双眸が凶暴な光を宿してきらめいた。
「俺は今更、お前の顔なんて、見たくもねえんだよ。頼むから、俺が何かしでかさない中に、帰れと言ったら、帰ってくれ」
最後の方は振り絞るような声だった。
