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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第17章 夢の終わり

「一体、どこの誰だと思う?」
 女将は薄い胸(〝大昔はこれでも豊かだったんだよ、あたしくらい豊満な身体をした妓生はいなかったものさ〟と自慢している)を得意げに反らした。
 応えようとしない光王に、女将がニッと笑う。
「―何が交換条件だ?」
 上目遣いに見上げた光王に、女将が片眼を瞑った。
「今度、うちに泊まっていってくれたら、考えても良いけど?」
 冗談だろうと叫びたいのを堪える。顔が引きつりそうになるのは、女将だけではなさそうだ。
 と、女将が低い声で笑いながら、手のひらをヌッと突き出した。
「ふふっ、今のは冗談。くれるものをちゃんと出せば、情報はちゃんと渡すよ」
「ちっ、どこまでも抜け目のない婆さんだぜ」
 光王は懐から小さな巾着を出し、小銭を女将の手に載せる。

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