
同居人
第5章 それぞれの相手
しばらく
黙り込んで
「もう…忘れたいんだよね」
と答えた。
「何で忘れたいの?」
「彼とはちょっと変な関係でね…彼の方から好き、って言ってくれたんだけど…」
「だけど?」
「…私が彼を怒らしちゃって…出て行っちゃったの」
「それで?」
「たまたま彼の姿を見かけたんだけど…女の子と一緒にいたの。それで彼の本当の名前も知らなくて…何にも知らない私はもう諦めよ、って」
「別になみの人生だからつべこべ言いたくないけどさ…
私、なみには素直になってほしい」
素直…?
「ま、後悔しないようにできるのが一番だよね」
そう言って里香は
出て行った。
きっと里香みたいな
子は絶対良い人と
出会えるな、って
思った。
